AZ−1はMX-R01の後継車ではなかった

 ではパンフを拡大してみよう。











 MX-R01についていろいろ書かれている、今となっては大変貴重な資料。AZ−1的に関係があるのは冒頭の数行に書かれている言葉、MX-R01という車名の由来である。



 もうお気づきの通り、車名の由来にAZ−1が入っていないのである。AZ-3が入っているにもかかわらずだ。この理由は簡単で、MX-R01がルマンを走ったのが1992年の6月。対してAZ−1が発売されたのが、1992年の10月だから。とはいえ、仮にAZ−1が早く発売されていたとしても、無視されていたと思う(爆死)。
 歴史の巡り合わせとは不思議なものである。理由はどうであれ、これが決定打となりAZ−1はMX-R01の後継車ではないことがはっきりした(他ならぬマツダ側が頭数に入れていない)。つまり1992年10月に発売されたAZ−1は、公式資料的には1991年に優勝した787Bや1992年6月にルマンを走ったMX-R01のいずれにも属していない。
 この「コウモリ星人」的な、はたまた着せ替えボディーで「カメレオン人間」的なAZ−1のありようは、自動車趣味をする者にとって実に都合がいい。ワークスマシンが作りあげた勝利のストーリーに縛られることなく、後付け理論とサイドストーリーで好きな方向へ持って行けるからだ(ほとんどガンダムワールドですな)。ただし、理屈を正当化するためにはオーナー自身が積み上げていく「実績」が不可欠となる。その分、やりがいも大きい。

 AZ−1的にはやはり勝ち馬に乗りたいので787Bの正当後継車だと名乗りたい。この点は他のマツダ車もおなじだろう。となると、後継車としての条件・決定打として必要になるのが「実績」。AZ−1は現時点で787Bの正当後継車だと名乗れるだけの、他のマツダ車の追随を許さない数々の実績を既に持っているのだが(例えば海外で24時間耐久をやったとか、787Bといっしょに長期間展示されたとか)、さらに盤石なものとするためにも様々な「実績」を積み重ねていきたい。なんといっても車自体が非常にマイナーだから、より一層の努力と周知徹底が必要なのだ。
 「エンジンの作動原理が787Bと同じだから、この車は787Bの後継車である」なんて単純なストーリーでは趣味としての面白味に欠ける。自分たちなりに様々な「実績」を積み重ね、オーナーなりのサイドストーリーを作り上げていく行為もまた自動車趣味の1つのあり方であり、楽しみ方であると考える。