10年の答え・・・みんなフェラーリのF1が見たかっただけ??

 結論から言うと、
車のミーティングへは来るやつは絶対に来るけど、来ないやつはどんなに条件が良くなっても絶対に来ない
一般客は、旧車、珍車、超高級車が見たいのではなく、フェラーリのF1が見たかった。
 ということが、Tipoオーバーヒートミーティングの10年を通じてわかってしまった。導出されたこの結論は、自動車関係のイベントを開くに当たり大いに参考となる。


 以上の結論に至った過程を1つずつ紐解いていこう。

1.来るやつは来るけど、来ないやつは来ないこと、について
 9回目及び10回目のTipoオーバーヒートミーティングでは、1〜8回目のミーティングと決定的に異なる点があった。それは交通費。後の歴史のために記しておくと、2007年に発生したいわゆるリーマンショックにより世界経済は大混乱に陥った。アメリカやヨーロッパほどではないにせよ日本も大きな影響を受け、緊急経済施策がとられた。その1つが、高速道路の土日祝日1000円乗り放題だったのだ。
 自動車関係のイベントに車で参加するにあたっては、この施策は非常にありがたかった。交通費が劇的に安くついたのだ。順当に考えれば9回目及び10回目のTipoオーバーヒートミーティングは参加者が激増するはずだった・・・ところが人数(一般客)は増えるどころか激減。全く知名度のなかった第一回目ぐらいになったように感じた。メーンスタンドに人がいないのである。



 つまり、交通費という最大のネックがなくなっても、車のイベントには一般客は来ないのである。


2.結局フェラーリのF1が見たかっただけ、について
 実は一般客が一番多かったのは、フェラーリのF1が走っていた頃だった。このころは高速道路の「通勤割引」さえなかった時代だ。オーバーヒートミーティングは、もともとコーンズがメーンスポンサーだった。コーンズとは日本におけるフェラーリの代理店だったのだ。ところが販売権がコーンズからフェラーリに大政奉還され、メーンスポンサーから降りる1要因となった(現在は征夷大将軍であるコーンズに政権が投げ返されている)。それに伴いフェラーリのF1が走ることはなくなり、代わってクラッシックF1が走るようになった。その頃から一般客の客足は遠のき、現在に至っている。
 結局一般客はフェラーリのF1が見たかっただけだったということだ。



 以上の結論は、我々にどんなことを教示してくれるのだろうか。ABCミーティング広島Finalで取り組んできた事例も含めて考えてみた。
 まず最初に言えることは、一般客は「車」に興味があるのではなく「フェラーリのF1」にのみ興味があったことだ。恐らくオーバーヒートミーティングの目的の1つであろう、「旧車、珍車、超高級車など様々な車に接することで、車に対する関心を深める」が、10年かけても全く達成できなかったことになる。仮にこの解釈が正しいとするなら、自動車趣味をやっている我々にとっても衝撃的な結果である。「車(特に趣味の車)」に興味を持つ人間は、減ることはあれど増える可能性は小さいということを意味する。この現象を示す定量的データの1つには東京モーターショーの入場者数の減少が有名であるが、オーバーヒートミーティングでもそれを裏付けるある程度定量的な数字が出てしまった。
 詳細は別途報告するが、ABCミーティング広島Finalでは、広島市交通科学館主催のモーターフェスティバルに乗じてABCミーティングを行い、モーターフェスティバルに訪れた観客にもABCの生き様を見てもらおうとした。しかし実際に会場(実際にABCが2百台ほど並んでいる場所)に訪れた人はあまり多くなかったようだ(ABCミーティングのテントブースにはそこそこ来てくれたのだが)。一般の人は、やはり華のある車にしか興味がないということか。


 オーバーヒートミーティングでは、結構カネをかけて裾野を広げようとする試みが行われたことがある。それは家族向けのイベントを行うというもの。理由については を参照。これもまた予算をかけた割には参加者が利用することはなく効果はなかった。
 ABCミーティング広島Finalでも、ほぼ同様のコンセプトを取り入れ実践した。要は家族も楽しめるように種々の設備が備わったアウトレットモールで開催したのだが、オーバーヒートミーティングと同様、家族向けとして用意したアウトレットモールの設備が活用されることはほとんど無かったようだ。規模やターゲットが違っても、同じ結果になってしまった。


 以上のことを再度まとめると・・・

 1.一般の人の目を趣味の車に向けさせることはかなり難しい。
    →クローズドのミーティングでも差し障りない。
 2.車のミーティングにおいて、オーナー以外の人に配慮してもあまり意味はない。
    →オーナーが楽しめるように規模・場所・予算を重点配分する。これがあるべき姿。
     車に興味を持たない同伴者の都合は考慮するだけ無駄。

 といったことが言えるのではないかと考えられる。ただし取り組みを全否定しているわけではないので、機会をみて裾野を広げる努力は今後とも続けていきたいし、皆さんもオーバーヒートミーティングが教えてくれたデータを車のミーティングに生かしてほしい。



 最後に特筆すべきことを書いておこう。今回のオーバーヒートミーティングでは、ランボルギーニが全滅に近い状態だった。以前はものすごい数が来ていたのだが、9回目あたりから極端に少なくなっていた。明確な理由は不明であるが、不況が影響している可能性は否定できない。景気が悪くなったから車を維持できなくなり、売っぱらったのではないかと考えられる。なぜこんなことがいえるかというと、オーバーヒートミーティングでは過去に年収に関するアンケートがとられたことがあった。その際の最高年収の欄は「800万円以上」しかなかったのだ。「年収800万円でランボルギーニなんかが所有できたら苦労せんわい」と思ったのだが、この状況をみるとみんなギリギリの予算で購入していたのだと推察される。この結果が、ランボルギーニは趣味の車ではなく中途半端な金持ちの道楽の手段でしかない、ということを意味するのであれば非常に残念だ。
 なおフェラーリの名誉のために書いておくと、多少数が減ったと感じられるくらいで全滅ということはなかった。