ランエボ、その2

 またアルミフェンダーに話を戻そう。簡単に考えると「なんだ鉄からアルミに変えただけじゃないか」という話になるのだが、よくよく考えてみるとそんなに単純な話ではない。なぜなら、アルミと鉄で熱膨張率が異なるためである。
 熱膨張率が最も問題になるのが、塗装後の乾燥工程である。量産工程では塗装後180℃程度で加熱乾燥させる。さすがに180℃ともなると熱膨張率の違いは無視できなくなる。アルミフェンダーを別のラインで塗装し、冷えた後で鉄のフレームに組み付けるのなら簡単なのだが、下の写真を見ていただくと、アルミのフェンダーと鉄のフレームとを取り付けてあるネジも塗装してある。つまり、フェンダーがフレームに取り付けられたままで塗装されているのだ。




 では熱膨張率の違いをどこで吸収するのか疑問が生じるのだが、フェンダーは上の写真で示すような台座に取り付けられている。かなり貧弱に見える台座なのだが、貧弱ゆえに膨張率の違いを吸収しているのではないかと考えられる。
 話は変わるが、この台座の隙間部分(フェンダーで陰になる部分)もきれいに塗装されている。どうやって塗装のノズルの取り回しをしたのだろう。


 一方、通常の鉄フェンダーであるギャラン・フォルティスはどうなっているのだろうか。




 見たところ、アルミフェンダーのランエボと同じだった。鉄の方が固いので、同じような取り付け方をしていても、台座がゆがんだりしないのだろう。




 ボンネットを開けたところ。当然鉄のボンネットなのだが、他社の同程度の面積を持つボンネットと比較すると、何か間違っているんじゃないかと思うくらい重い。体感重量で2倍程度ある。この観点からすると、ランエボはアルミボンネット化する前に、軽量化した鉄のボンネットを検討した方が、コストも安くついてよかったような・・・




 ちなみに三菱はデリカD5でプラスチックフェンダーを採用している。しかもAZ−1とは異なって、鉄のフレームにプラスチックのフェンダーをつけたままで塗装している。プラスチックとなると、アルミとは比べものにならないくらい鉄との熱膨張率が異なる。ドライビングフェアではデリカD5も展示してあったのだが、フレームとフェンダーが取り付けられている部分が見られる状態でなかったのでレポートは略する。が、これはこれですごい技術である。