そもそもガレージとは、誰をターゲットとして売られているのか?

 この題目を一番最初に持ってこようか、最後に持ってこようか悩んだのだが、結局最後に持ってきてしまった。

 こんな高いものを誰が買うのか。ダイワハウスがターゲットを紹介している記事を発見した。念のため言うと、今回紹介した東洋エクステリアやトヨタホームとは商売仇にあたるが、雑誌ガレージライフが仕掛け人になっている点は一緒だ。
 これによると、

対象として想定したのは、子育てやローンが終わった50〜60代の余裕のある世代ですね。この辺の世代には「残りの人生を楽しむ」ことに目を向けたアクティブな方々が大勢いらっしゃいます。そうした方々が趣味に没頭できるようなぜいたくな空間、それが今回の住宅のコンセプトです。

とあった。う〜ん、やはり金持ち向けか・・・


 「子育てやローンが終わった50〜60代の余裕のある世代」とはいったいどんな世代なんだろう。家のローンを払い終わったとたんその家を売り払い、新たにローンを組んでガレージ付きの家を建てようと思っているような余裕のある世代なのだろうか?? それとも、子育てが終わるまで家を建てなかった人がターゲットなのだろうか。



 ところが現実は甘くない。90歳まで生きて車に乗っている(90歳で運転できるのか?)と仮定した場合、余裕ある生活をおくるためには退職時に4000万〜5000万円の貯蓄が必要という驚くべき結果が出てくるのだ。よほどの金持ちじゃない限り、この歳になって立派なガレージなんか建てている場合じゃないのである。団塊世代の大量退職で金余りになるといわれているが、どうにも理解できない。私のシミュレーションが間違っていることを願うばかりである。

 予測の前提条件はこうだ。60歳定年で65歳まで嘱託で仕事をするとする。従って65歳から90歳までの25年間は無収入となり、60歳から65歳までは収支とんとんだと仮定する。
 次に支出だ。標準的な生活費用は統計の結果30万円/月と見込まれている。これに余裕ある生活を送るため、10万円/月が必要だとする。またAZ−1と雨の日用の車の2台を90歳まで所有するとなると、駐車場代や車検代、税金、任意保険代、AZ−1の大量の部品を置く倉庫の費用が必要となってくる。
 最後は収入だ。国民年金と企業年金等を合わせた額が夫婦で約30万円/月と見込まれる(←年金をもらう頃に、前提条件通りもらえるかどうか疑問であるが)。ちなみに退職金は企業年金を含んでおり、いわゆる退職一時金は無いよりはましというレベルである。
 以上をまとめると、65歳〜90歳までの25年間、毎月10万円づつ赤字が出ることになる。年額にすると120万円。それが25年間必要だとすると、120万円×25年で3000万円が必要である(おいおい)。あとは有料老人ホームへの入居一時金が1000万円(月々の生活費用はホーム入居前と同じと仮定)で、これで既に4000万円。あと25年分の車検費用と税金や駐車場代を合わせると、これまた1000万円弱と見込まれる。あ〜あ、合計するとついに約5000万円になってしまった。
 私の場合子供がいないので、一般で言うところの子供が独立した後の生活、つまり50歳代後半の生活レベルを既に何十年も前から体験していることになる。驚かれるかもしれないが、現実に生活している実感からして、確かにこの程度の出費はあり得ると言える。「子供が独立すれば生活が楽になる、だから老後も余裕が出るはず。」などという考え方は甘すぎる。さらに子供がいればいるほど将来に必要な貯蓄が困難となり、売ればなんとかなると当て込んでいた持ち家も、一等地に立っているものでない限り、定年あたりになると人口減少による需要の低迷&古くなりすぎて売るに売れない不良資産となろう。気が付いたときには既に手遅れで、「全ては無に帰し、生活保護を受けながら赤貧のうちに孤独死したのであった・・・」なんてことが起こりうるのである。該当する人は、自動車趣味を続けるためにも将来を見据えた早急な対応が必要であると考える。


収入 支出 収支 取り崩す貯蓄額
60歳〜65歳まで嘱託で働く
年収は600万円と推定
600万円と推定 収支とんとん 0円(貯蓄の取り崩しなし)
65歳以降(夫婦合計)
国民年金+企業年金等=30万円
年間360万円と推定
標準的な生活費用(30万円)+
余裕ある生活費用(10万円)=40万円/月
年間約480万円と推定
ただし車の維持にかかる特殊費用は除く
約120万円の赤字と推定 120万円/年
 
以上を65歳〜90歳まで続けた場合
25年間で年金の総額が9000万円
25年間で1億2000万円
ただし車の維持にかかる特殊費用は除く
25年間で約3000万円の赤字と推定 3000万円/25年
その他必要経費 老人ホームの入居一時金=1000万円
(持ち家の人はリフォーム代と考える)
入居後の生活費は40万円/月で変化無しとする
1000万円の出費 1000万円/一生に一回
車やバイクにかかる特殊費用 部品庫費用=24万円/年
補修費=10万円/年 合計34万円/年
25年間で850万円の出費 850万円/25年
取り崩す貯蓄額の合計 3000万円+1000万円+850万円=
4850万円(マジっすか?)



 なんか絶望的な気分になってくるが、このシミュレーションの収入面には「親の遺産」「貯蓄の利息」といったものは入っていないし、相続税や怪我や病気に対する急な出費も含まれていない。年金受給額は年をとるほど下がっていくのだが、簡略化のため無視している。不確定要素がかなりあるシミュレーションなのだ。一方で私の場合、楽観視できるデータも持ち合わせている。記録に信憑性のある先祖代々の死亡年齢を見ると、市川家の男性の場合、江戸時代から現在に至るまで、皆70歳前後で死んでいるのである。医療技術の進歩や動乱の有無に関わらずである。90歳まで生きた上に車に乗っていると仮定するからこんなシミュレーションになるのだが、そこまで長生きできないのであればもっと楽になる・・・
 ちなみに、友人のフィナンシャルプランナーに「自分自身の現状をふまえた上で、これからの将来を予測したらどのような結果になるのか?」と聞いたことがある。答えは「既に人生終わっとる」とのことだった。でも彼は生きている。悲観することなく、開き直ることも必要なのかもしれない。

 このシミュレーションの確度はともかく、老後はどうやらかなりのカネがかかるらしい。こんな状況下で「子育てやローンが終わった50〜60代の余裕のある世代」を対象とするとの結果は、いったいどういうマーケティングから出てきたのだろう。「ローンが終わった」という言葉を裏返すと、「ローンを返していたために貯蓄があまりできていない」ということに他ならない。マーケティングの結果を正確に解釈すると「子育てやローンが終わった50〜60代の、自分には余裕があると勘違いしている世代」ではあるまいか。


 自動車趣味をする者は、常に車の維持管理ができるよう将来を見渡しておく必要があると考える。