東洋エクステリア スタイルコート、その2

 ガレージと言えば車を駐車し整備するところ、さもなくば単なる車の駐車スペースがその本質だろう。整備もできないのに、または単なる駐車スペースでもないのに分不相応な工具を揃えるのはカッコつけてるだけであり、「ガレージライフ」ではなく、「原寸大ジオラマライフ」と呼ぶべきであると考える。
 このガレージにはどんなものが置かれているのだろうか。みてみた。壁には長さ2.3m、高さ1.8mの棚がある。ただし、棚の奥行きは30cmほど。この角度では、ロールキャブとコードリール、オイルジョッキ、なぜかコンプレッサーではなくエアタンクが見える。




 別の角度からみると、下に馬とフロアジャッキがみえる。こんな綺麗な床に、馬やジャッキはかけて傷を付けるような真似はできないなあ。それにしてもロールキャブの奥行きがない。30cm程度しかない。よくこんな小さいのを探してきたものだが、小さすぎて中には大した工具が入れられず、残念ながら飾りに過ぎない。




 奥には作業台もあった。これも奥行きが30cmほどで、残念ながら作業台としてはまず使えない。机の大きさから考えると、キャリパのオーバーホールが限界か。キャブをオーバーホールするには、細かい部品を整然と置くスペースが不足しているようにも感じられるし、ヘッドはぐってバルブを組み替えるのはちょっと難しいかもしれない。




 奥行きを見てみよう。車前方側。シャッターを降ろすために必要な空間を考えると、めいいっぱい前に出している。




 車をめいいっぱい前に出してできた後ろ側のスペースがこれ。テーブルとか置いてあるが、ここに折り畳み式のエンジンクレーンを入れるともう一杯になろう。つ〜か、降ろしたエンジンはどこに置くんだ?




 廃タイヤで作ったテーブルにシャンパン。「車を見ながら酒を飲んで語らう」なんてことをやってみたい人が多いんだろうなあ。





カタログにもこんなことが書かれている。




 しかし現実を避けて通ることは出来ない。粗を探しているわけではないのだが、こんなことは無理。特にキャブ車の場合は、キャブから上がってきたガソリンが臭くて臭くて、とても車を見ながら酒なんか飲める気分になれない。キャブから上がってくるガソリンは、普通のガソリンの匂いとはかなり違っていて、コールタール臭やミッションオイルの匂いに近い。この展示車両は会場まで自走してきたのだろう。ガレージの両面が開いているにも関わらず、キャブから上がってきたガソリンの匂いが漂っていた。通常はシャッターも横の折戸パネルも閉めきっている。この狭い空間にあの匂いが充満すると思うと、個人的には絶対いやである。開放しても匂いが染みついてとれない。ガソリンの匂いの他に蚊も飛んでくるし・・・特に何の予備知識もなく原寸大ジオラマをはじめた人は、夢と現実とのギャップに驚き、幻滅し、臭いと嫁さんになじられて、大金をつぎ込んだことに後悔するのではないだろうか。
 「話が違う!」と文句を言ったところで、「私にはそんな匂いは感じられません。個人差です。」なんて営業担当にうそぶかれておしまい。換気扇をつけたら対処できるという匂いではない。ガソリンを容器に入れて台所の隅に置き、換気扇を回してみれば実体が分かる(注意:ガソリンが充満した部屋でスイッチを入れると爆発する恐れがあります。検証の実践はやめましょう)。フロート室や燃料ポンプ以降の配管にたまったガソリンが徐々に徐々に出てくるから、エアクリに鼻を近づけても匂いが気にならないレベルになるには、weberの場合で4〜5日は必要だ。

 なおこのガレージの値段は、業者向け価格で217万円。工事費は含まれていない。実際に建てるとなると250万円は超えるだろう。車両価格が1000万円の車を250万円のガレージに入れるとすると、車両価格の1/4がガレージ代ということになる。500万円の車なら1/2だ。車そのものよりも原寸大ジオラマの製作自体に価値を見いだしているのならともかく、自動車趣味の本質からあまりにはずれた金の使い方じゃないだろうか。